■卯月の着物


うらうらと長閑な陽気。桜をはじめとする様々な花だよりが各地から届き心弾む季節です。春爛漫。都会においてもあちらこちらで花に出会えます。野に山に遊べば若々しい草の色も目にまぶしくて、すべてが生命力に満ちあふれて輝いています。そんな春の着物の模様をどう選ぶかという基本は、自然の移り変わりを抜きには考えられません。花の少ない季節は花の模様を身にまとい、花の多い時季には花に遠慮をする。
現在ではきものを重ねて着るという習慣はありませんが、平安時代の十二単衣を始めとして、五衣(いつつぎぬ)とか、色襲ねといって二枚以上のきものを重ねて着る着方が昭和初期までありました。現在の生活の中で、色襲ねを楽しむとすれば、きものときものの裏(胴裏・八掛)や長襦袢の色の合わせ方でしょう。時には色の違う二枚の無地を重ねて着るのも贅沢な楽しみ方ですね。春の色は、新緑の色重ねが美しいとあり、古くより王朝人はこの色合わせを「柳襲」という言葉で表していました。「桜襲」「若草襲」「山吹襲」と春に咲く花の色と華の色、または花びらと花心の色を重ねるという事もありました。
また桜の花の柄と桜色を重ねるのも華やかです。いづれにしても四月の花柄は花びらだけにするなど季節よりひと足早い花を身につけるそんな心ばせで春の花のきものを思う存分楽しみたいですね。

 

戻る